その配当、申告したほうが得ですか?
1. 3つの方式で何が変わるのか
| 申告不要 | 申告分離 | 総合課税 | |
|---|---|---|---|
| 所得税 | 15.315% | 15.315% | 累進(5〜45%) |
| 住民税 | 5% | 5% | 10% |
| 配当控除 | 使えない | 使えない | 使える |
| 譲渡損失と通算 | できない | できる | できない |
| 合計所得金額に入る | 入らない | 入る | 入る |
| 国保の算定に入る | 入らない | 入る | 入る |
| 扶養の判定に影響 | しない | する | する |
いちばん見落とされるのは「申告分離課税でも、配当は国保の算定に入る」という行です。税率が源泉徴収と同じ20.315%なので「何も変わらない」と思われがちですが、 申告した時点で住民税の所得に入り、そこから保険料と扶養の判定が動きます。
2. 「住民税だけ申告不要」はもう選べません
令和5年分(2023年分)までは、所得税は総合課税で申告して配当控除を取りながら、 住民税だけ申告不要を選んで国保への影響を避ける、という組み合わせが選べました。 これが「配当は申告したほうが得」と言われていた頃の前提です。
令和6年分(2024年分)の申告からは、所得税と住民税で課税方式を一致させることが必要になりました。所得税で申告した配当は、必ず住民税でも申告したことになります。 古い記事やYouTubeの解説には、この改正前の話がそのまま残っています。 本ツールは改正後の前提で計算しています。
3. 所得税の速算表
出典: 国税庁 No.2260 所得税の税率
| 課税所得(以下) | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,950,000円 | 5% | 0円 |
| 3,300,000円 | 10% | 97,500円 |
| 6,950,000円 | 20% | 427,500円 |
| 9,000,000円 | 23% | 636,000円 |
| 18,000,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 40,000,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 上限なし | 45% | 4,796,000円 |
これに復興特別所得税(基準所得税額の 2.1%)が乗ります。 住民税の所得割は一律 10% です。 申告分離課税は所得税 15% + 住民税 5% で、復興分を入れると合計 20.315% になります。
4. 配当控除(総合課税を選んだときだけ)
出典: 国税庁 No.1250 配当所得があるとき
- 課税総所得金額等が 10,000,000円以下の部分: 所得税 10% / 住民税 2.8%
- 超える部分: 所得税 5% / 住民税 1.4%
総合課税の実効税率は、おおまかには(所得税の税率 − 10%)×1.021 + (10% − 2.8%)になります。所得税率20%までは申告分離の20.315%より低く、23%になると逆転します。分かれ目はおおむね課税所得695万円ですが、配当を足したことで税率が上がる場合もあるので、本ツールは1円単位で実際に計算しています。
注意点として、配当控除は税額控除なので、所得税額を超える分は切り捨てられます。所得税をほとんど払っていない方は、配当控除を使い切れません。 また住民税では総合課税の実効税率が 10% − 2.8% = 7.2% となり、申告分離の 5% より高くなります。総合課税は「所得税で得して住民税で損する」形です。
5. 国民健康保険料をどう扱っているか
国保・後期高齢者医療の所得割は、おおよそ(総所得金額等 − 430,000円) × 所得割率で決まります。配当を申告すると総所得金額等が増えるので、その分だけ保険料が上がります。 本ツールが出しているのは、この増えた分だけです(保険料の総額は出しません)。
所得割率は市区町村ごとに違い、全国共通の数字が存在しません。ここに全国平均を置くと、あなたの自治体では外れている金額を「あなたの保険料の増加」として 画面に出すことになります。だから率が未入力のうちは、点の金額を出さずに 国保なら 9%〜13%、後期高齢者医療なら 8%〜12% の幅でだけ表示します。 そして判定はいちばん高い率を前提に行います (申告が得に見えすぎないようにするためです)。
率は、毎年6〜7月ごろに届く国民健康保険料の納入通知書か、 お住まいの自治体サイトの「国民健康保険料率」に書いてあります。 国保は医療分 + 後期高齢者支援金分( + 40〜64歳の方は介護分)の合計を入れてください。均等割・平等割は所得で動かないので扱っていません。
6. 扶養から外れると、増える税金は他人に出ます
あなたの合計所得金額が 580,000円を超えると、あなたを扶養している方の扶養控除が消えます。 本ツールは、その方の所得税率を選んでもらって「その方の税金がいくら増えるか」を計算し、 世帯の合計に足しています。
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 一般の扶養親族(16歳以上・下記以外) | 380,000円 | 330,000円 |
| 特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 630,000円 | 450,000円 |
| 老人扶養親族(70歳以上・同居以外) | 480,000円 | 380,000円 |
| 同居老親等(70歳以上・同居) | 580,000円 | 450,000円 |
出典: 国税庁 No.1180 扶養控除。19歳以上23歳未満の方には、所得が増えたときに控除が一気に消えるのではなく 段階的に減る仕組み(特定親族特別控除)があります。本ツールは段差として扱っているため、 実際の増税はこれより小さくなることがあります。
7. このツールが意図的に持っていないもの
所得割率も賦課限度額も市区町村ごとに違い、全国共通の数字が存在しません。ここに全国平均を置くと、あなたの自治体では外れている金額を「あなたの保険料の増加」として画面に出すことになります。あなたの通知書(国民健康保険料納入通知書)か自治体サイトの率を入れるまでは、点の金額ではなく幅でしか出しません。
改正が多く、間違えると3方式すべての税額が同じ方向に狂います。しかも狂ったことに気づく手がかりが画面に出ません。源泉徴収票や確定申告書に、あなたの正しい数字がすでに印字されているので、それを転記していただくほうが確実です。
住民税の課税所得は、所得控除の額が所得税と違うため、源泉徴収票からは分かりません。ただし所得割は一律10%なので、「方式を変えたときの差」だけはベースの金額を知らなくても出せます。だから差だけを出しています。
配当を申告すると住民税の所得が増えるため、これらの判定に影響することがあります。ただし判定の基準額も段階の刻みも制度ごと・自治体ごとに違い、そのうえ世帯全体の所得で決まるものもあります。効くことだけをお伝えし、金額は出しません。
配当を被扶養者の収入に含めるかどうかは、加入している健康保険の保険者によって扱いが異なります。全国一律のルールがないので、警告だけを出しています。ご加入の健康保険組合・協会けんぽにご確認ください。
外国法人からの配当には配当控除が使えず、代わりに外国税額控除という別の計算になります。同じ画面で混ぜると3方式の結論が反転するため、外国株の配当は外国税額控除の専用ツールに分けています。
確定申告書のデータ形式は国税庁の公開仕様に厳密に従う必要があり、検算していない出力を配ると、そのまま提出されて誤申告になります。初版では計算結果と転記先の案内までにしています。
税額と保険料の差までは計算できますが、各種給付・自治体独自の減免・世帯の事情は本ツールが見ていない要素で決まります。出すのは差だけで、選ぶのはご本人です。
8. 通信とデータの扱い
- 計算はすべてブラウザの中で完結します。課税所得・配当額・扶養の状況・自治体の料率は サーバーに送られません。
- 入力内容と履歴は、この端末の localStorage にだけ保存されます。
- 共有リンクに載るのは、丸めた万円・方式の番号・税率・逆転フラグという数値だけです。文字列は載らないので、 共有画像に任意の文言を差し込むことはできません。
- 外部APIも生成AIも使っていません。使っているのは、上に書いた税率と控除の表の四則演算だけです。
- メールアドレスを登録された場合だけ、そのアドレスがサーバーに送られます (入力した金額や計算結果は送られません)。